精密耐震診断は一般耐震診断より、
建物の各部位の強度を具体的に考慮して建物の耐力を診断する方法です。
おもに、動的耐震診断や一般耐震診断で耐震改修が必要と判断された場合の
補強設計および補強後の耐力検証をするための一つの手段です。
精密耐震診断とは?
診断からわかること
報告書サンプル
【 精密耐震診断とは? 】
精密耐震診断は動的耐震診断や一般耐震診断で耐震改修が必要とされた場合、耐力不足の壁の強度をどれくらいにしたら良いかを既存建物の状態を考慮して計算で検証するための方法です。尚、新耐震基準による検証は構造計算を行い判断します。
【 精密耐震診断からわかること 】
建物が保有する耐力と必要耐力(地震力を考慮)を比較してその建物が安全かどうかを計算により診断します。
1)必要耐力の算定
建築基準法施行令に準じて算出します。下記地震力Qiを必要耐力Qrとします。
(地震力)
Qi=Ci×ΣWi
第88条 建築物の地上部分の地震力については、当該建物の各部分の高さに応じ、当該高さの部分が支える部分に作用する全体の地震力として計算するものとし、その数値は当該部分の固定荷重と積載荷重との和(第86条第2項ただし書きの規定によって特定行政庁が指定する多雪区域においては、更に積雪荷重を加えるものとする。)に当該高さにおける地震層せん断力係数を乗じて計算しなければならない。この場合において、地震層せん断力係数は次の式によって計算するものとする。
Ci=ZRtAiCo
この式において、Ci、Z、Rt、AiおよびCoは、それぞれ次の数値を表すものとする。
Ci:建築物の地上部分の一定の高さにおける地震層せん断力係数
Z :その地方における過去の地震の記録に基づく震害の程度及び地震活動の状況その他地震の性状に応じて1.0から0.7までの範囲内において国土交通大臣が定める値。
Rt:建築物の振動特性を表すものとして、建築物の弾性域における固有周期及び地盤の種類に応じて国土交通大臣が定める方法により算出した数値
Ai:建築物の振動特性に応じて地震層せん断力係数の建築物の高さ方向の分布を表すものとして国土交通大臣が定める方法により算出した数値
Co:標準せん断力係数は、0.2以上としなければならい。ただし、地盤が著しく軟弱な区域として特定行政庁が国土交通大臣の定める基準に基づいて規則で指定する区域内における木造の建築物(第46条2項第1号に掲げる基準に適合するものを除く。)にあっては、0.3以上としなければならない。
必要耐力Qrを算出する際の重量は、住宅簡易重量表として下表を採用し、一般耐震診断「床面積あたりの必要耐力(kN/u)」に各階の床面積を乗じて求めます。
2)保有する耐力の算定
保有する耐力(Qd)は下式により算定します。
Qd=(Qwn+Qww)×Fs×Fe
Qd :保有する耐力
Qwn :無開口壁の耐力
Qww :有開口壁の耐力
Fs :剛性率による低減係数
Fe :偏心率と床仕様による低減係数
3)建物耐力の評点
各階、各方向(X、Y)について、保有する耐力(Qd)を必要耐力(Qr)で除した値を算出し耐力評点とする。
耐力の評=Qd/Qr
4)各部の検討 下記の項目を調べて報告します。
(1)地盤
(2)基礎
(3)水平構面の損傷
(4)柱の折損
(5)横架材接合部の外れ
(6)屋根葺き材の落下の可能性
5)上部構造の耐力の評価
下表により判断します。
上部構造評点 | 判定 |
1.5以上 | 倒壊しない |
1.0以上1.5未満 | 一応倒壊しない |
0.7以上1.0未満 | 倒壊する可能性がある |
0.7未満 | 倒壊する可能性が高い |
【 精密耐震診断・報告書サンプル 】
